Java基礎 第10回ではコンストラクタを解説しました。
この記事では、オブジェクト指向プログラミングの一角を担う「 カプセル化 」について深く掘り下げています。カプセル化の役割、基本的な概念、そしてその具体的な実践方法について、情報隠蔽とデータ隠蔽の観点から具体的なJavaコードを交えながら詳しく解説しています。また、カプセル化のメリットと注意点も触れています。皆さんはオブジェクト指向プログラミングの重要な部分を理解し、自身のコーディングスキルを向上させることができます。
初学者の方が更に実践的なプログラミングを学ぶ際にピッタリな内容になっていますので、コードを一緒に書いてみながらお読みください。
カプセル化の役割と重要性
オブジェクト指向プログラミングの3つの主要な概念である「継承」「ポリモーフィズム」そして「カプセル化」の中で、今回は「カプセル化」について解説します。
カプセル化とは?
あるオブジェクトの内部構造や実装の詳細を隠蔽(つまり、隠すこと)し、不適切な操作からオブジェクトを保護するという概念です。
これは、一般的には、ある車のエンジンのメカニズムを知らなくても車を運転できるように、オブジェクトの内部の複雑さを隠し、ユーザーが安全にオブジェクトを使えるようにするための手法です。
具体的には、カプセル化では、データとその操作を一つのパッケージ(クラス)に結びつけ、データを直接触れることができる操作を制限することで実現されます。
カプセル化の一部として「情報隠蔽」と「データ隠蔽」があり、それぞれがJavaのプログラミングでどのように応用されるのかを以下で詳しく見ていきましょう。
カプセル化の基本概念
カプセル化とは、オブジェクトの状態(フィールド)と振る舞い(メソッド)を一緒にパッケージ化し、外部から直接アクセスできないようにする技術です。これを理解するための一つの比善は、車の運転です。運転する時、エンジンの具体的な内部構造を知らなくても、車を運転することは可能です。エンジンの具体的な動作は隠蔽され、運転者はステアリング、ブレーキ、アクセルペダルなど、限られたインターフェースを通じて車と対話します。
同じように、カプセル化では、オブジェクトの内部データ(エンジン)を直接触れることができる操作を制限し(運転者はエンジンに直接触れません)、代わりにそのデータへのアクセスを制御するメソッド(ステアリング、ブレーキ、アクセルペダル)を提供します。
Javaでのカプセル化は主にアクセス修飾子を用いて実現します。アクセス修飾子とは、フィールドやメソッドに対するアクセス範囲を制御するキーワードで、以下の4種類があります。
カプセル化では、主にprivate修飾子を使用し、クラスの内部データへの直接アクセスを制限します。
カプセル化の実践:情報隠蔽
情報隠蔽はクラスの内部の詳細を外部から隠蔽することを指します。Javaでは、フィールドをprivateに設定することで、そのフィールドへの直接アクセスを制限し、クラスの内部情報を隠蔽することができます。
例えば、以下の`Person`クラスを考えてみましょう。
public class Person {
private String name;
private int age;
//コンストラクタ
public Person(String name, int age) {
this.name = name;
this.age = age;
}
}
このクラスでは、「name」と「age」フィールドがprivateに設定されているため、Personクラスの外部からこれらのフィールドに直接アクセスすることはできません。これはまるである部屋のドアを閉じ、鍵をかけて中に入れないようにするようなものです。
カプセル化の実践:データ隠蔽
データ隠蔽はクラスの内部データを外部から隠蔽することを指します。しかし、全ての情報を完全に隠蔽するとデータへの全くのアクセスができなくなってしまうため、getterメソッド(データを読み取るためのメソッド)とsetterメソッド(データを設定するためのメソッド)を提供します。
このようにして、私たちは部屋の中を見たり、中に何かを置いたりするために特別な鍵(getterとsetter)を提供することができます。
たとえば、上記のPersonクラスにgetterとsetterメソッドを追加することができます。
public class Person {
private String name;
private int age;
//コンストラクタ
public Person(String name, int age) {
this.name = name;
this.age = age;
}
//ゲッター
public String getName() {
return this.name;
}
public int getAge() {
return this.age;
}
//セッター
public void setName(String name) {
this.name = name;
}
public void setAge(int age) {
this.age = age;
}
}
このように、データ隠蔽を実現するためには、通常、以下のような手順で行います
- フィールドをprivateに設定する。
- フィールド値を取得するためのgetterメソッドを公開する。
- フィールド値を設定するためのsetterメソッドを公開する。
このようにすることで、オブジェクトの状態はクラスの内部で管理され、オブジェクトのユーザーはgetterとsetterメソッドを介してのみその状態にアクセスすることができます。そのため、不適切な値が設定されることを防ぎ、オブジェクトの整合性を保つことができます。
情報隠蔽とデータ隠蔽の対比の表
カプセル化のメリットと注意点
カプセル化には以下のようなメリットがあります。
- データ保護: フィールドを直接変更できないため、データが不適切に操作されることを防ぎます。
- 再利用: ゲッターとセッターを通じてデータを操作するため、クラスの内部実装を知らずにコードを再利用できます。
- 整理整頓: クラスの内部構造を外部から隠蔽することで、クラスの使用者はクラスの公開インターフェースだけを理解すればよく、プログラム全体が整理整頓されます。
まとめ
以上がカプセル化の基本的な考え方と、それがJavaでどのように実装されるのかを説明した内容となります。
単にプログラムが動けばいい、というわけではなくお客様にアプリケーション構築をするなど実際の業務を想定した場合にカプセル化の技術はなくてはならないものです。
しっかりと身に着けておきましょう。
次回は、このカプセル化の概念を更に深めるために、「継承」というトピックを取り上げます。継承もまた、カプセル化と同じくオブジェクト指向プログラミングの重要な概念で、クラス間の関係を表現し、コードの再利用を可能にします。お楽しみに!
コメント